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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《神州纐纈城(しんしゅうこうけつじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 188,242 字 · 380 頁
五
五
夜は容易に明けそうにもなかった。
遠くで幾度か鶏が啼いた。夜啼鶏の啼き音であった。夜の深さを思わせた。
焚火がまたも消えそうになった。みんなじっと考え込んでいた。それに気の附く者がなかった。
と、この時松の木の背後へ、朦朧と人影が現われた。いずれ癩人に相違あるまい。焚火を慕って来たのだろう。どうして声を掛けないのだろう? 親しそうに近寄って来ないのだろう? 何故足音を立てないのだろう? 何故盗むように歩くのだろう?
焚火は今や消えようとした。
その人影は近寄って来た。
誰もそれに気が付かなかった。
人影は彼らの背後に立った。その前に子を抱いた女がいた。乳房の脱げた女であった。その人影は女の頸を、じっと上から見下ろした。と、斜に身が捻られた。と、右手が動いたようであった。何やらピカリと光ったようであった。
声一つ立てなかった。だが何か重い物が、屋根板の上へ落ちて来た。と、屋根板の山が崩れ、焚火の中へなだれ込んだ。焚火がパッと燃え上がった。人々は始めて気が附いた。
焚火の横に女の首が、仰向けになって転がっていた。その切り口から一匹の紅巾が、ズルズルズルズル引き出されていた。