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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁
あまりの事に、しばらくは涙も出ません。
その時ちょうど、上野の子刻が鳴ったのを、お礼はこの動乱の中に、不思議に活き活きと記憶していたのでした。
傷は後ろから袈裟掛に斬られたもので、一刀の柄に手をかけておりますが、鰹口二三寸抜き上げたままこと切れております。
「お礼どの、嘆いてばかりいる時ではない、下手人を捜して、父上の怨みを晴らさなければなるまい」
佐々波金十郎は、後ろからそっと、お礼のふるえる肩に手を置きました。
「旦那方は、この変死人を見知りの方でございますか」
町役人らしいのが多勢の中から出て来ました。
「左様、斬られたのは阿部川町の浪人藤枝蔵人殿、これなるは、お嬢さんのお礼どのだ」
「左様でございますか、――御身内の方なら、これをお目に掛けた方がよかろうと思いますが」
町役人はそう言いながら、一封の手紙を佐々波金十郎に渡します。
「何だ、これは?」
「死骸の袂から出ました、御覧の通り敵討の呼出し状で――」
「何? 敵討? これが敵討だというのか?」
佐々波金十郎は提灯の明りの中に、一封を押しひろげ、半分はお礼に見せるように読んでいきました。
大体の文意は――