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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

八

と平次。

「これを見て下さい」

指さしたのは、中ぐらいな鯉幟を半分ほどおろした下、幟の竹竿を立てた、厳重な二本の石柱のあたりに、紅に染んで一人の男が蹲っているではありませんか。

引起してみると、番頭の喜助、もう息も絶えて、呼び生けようもなかったのです。

灯を呼んで調べると、頸筋を後ろから引っ切った見事な深傷、多分、声も立てずに死んだことでしょう。

八

「親分」

「何だ、八」

「あの野郎を縛って構わないでしょうな」

「誰だい」

「稲妻小僧の六」

「見当が付いたのか」

「手代の文三郎ですよ。あれが稲妻小僧でなかった日にゃ、あっしは――」

「十手捕縄の返上は少し気が早いぜ、もう少し待ちな。――証拠が揃わない」

平次は落着き払います。もう暁近いでしょう。初夏といっても、涼しい風が寝不足の肌を引締めて、妙にゾクゾクさせます。

「家の中を嗅ぎ廻っているじゃありませんか。証拠なんか要るものですか、縛って引っ叩けば、手もなく白状しますよ」

「馬鹿っ、そんな世間並な気になるから、いつまで経っても見当が外れるんだ。岡っ引は科のないものを縛っちゃ恥だ」

「あの、あの男に科はないと言うんで――」