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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

五

ガラッ八は弾みのついた毬のように飛んで行きました。

五

ガラッ八の後ろ姿を見送って、平次はもう一度部屋の中を見廻したのでした。

「あの、主人は、もしや?」

女房のお吉は、自堕落な顔を引締めて、一生懸命になります。

「お気の毒だが、人手に掛って死んだよ」

「えッ」

「按摩が帰ってから、誰と誰がここへ入ったか、判るだろうな」

平次はすぐ大事な問に取かかりました。

「お雪さんと――」

お吉は自分の側にいる若い娘を振返ります。

「いつものように、水を持って参りました」

十八か十九か、四方の殺風景さに似ぬ、もの優しい娘でした。

「その時主人は生きていたんだね」

「え、寝息を聞いたような気がします」

「そんなに近く寄ったのかい」

お吉の眼は嫉妬に燃えました。

「でも――」

「このお雪さんというのは、主人の本当の姪じゃないんだね」

と平次。

「赤の他人ですよ。――元は奉公人だったんです。少し渋皮が剥けているばかりに、物好きな主人が姪とか何とか披露しましたよ」

本人を前に置いて、お吉の舌は深刻に発き立てました。

「それから誰が入った」

「番頭も手代も入りました。――その手代の文三郎が、主人が死んでいるのを見付けたんです」