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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

五

お品の聡明な眼が瞬きます。

「満更夢でもないらしいよ」

「どこから手をつけたものでしょう、親分」

「近所を一軒一軒虱潰しに捜すんだね、外に術はない」

「家の者は先達の九郎次夫婦を縛ってみようか――って口惜しがりますが、証拠のないものを縛るわけにも行きません」

「ともかく、下っ引を十人も駆り出して、東両国一パイに網を張ってみるがいい、夜中と暁方に通ったものは、犬っころ一匹逃さないようにするんだ」

風邪の床にいながら、平次の作戦は水も漏らしません。

五

その晩、お品は利助の子分と下っ引を総動員して、東両国一パイに網を張りました。戌刻過ぎに通る者は、按摩も夜泣き蕎麦も、犬っころ一匹も逃さない厳重さでしたが、祈祷所から出た者も祈祷所へ入った者も一人もなく、極めて平穏な春の夜は、うらうらと明けてしまったのです。

翌日は、元町一帯一軒残らず家捜しをしましたが、これも何の変哲もありません。

三日目の晩、思案に余って東両国へ出かけたお品、一軒一軒用事を拵えて当っているうち、どこの家でどう押えられたか、翌る朝になっても、姿を見せなかったのです。

ガラッ八の叔母もガラッ八自身も、それっきり姿を見せず、お品も行方知れずになって、平次は床の上で焼き付けられるような焦躁に囚えられました。