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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

利助はそれでも、床の上へ起き直って、まだ腹立たしさが納まらぬといった調子に、拳固で自分の膝を叩いております。

「そいつは災難だったね、何が一体飛込んで来たんだ」

「銭だよ」

「えッ」

「ちょっと見は、棒で突いたようだが、後で見ると、縁の下に、肉の厚い永楽銭が一枚落ちていたんだ。こいつでやられたことは間違いのねえところだ」

「ヘエ――」

「余程腕の利く奴が、植込みの中から、銭を投りゃアがったんだよ」

「…………」

「どんな怨みがあるか知らないが、太い野郎じゃないか。捕まえたら、眼球でもくり抜いてやろうと思っている」

たった一つの眼を光らせて、一徹な歯を喰いしばる利助の気持を、平次はもとより察し兼ねたわけではありません。

植込みの外というと、三間近い距離から、縁側に転た寝している利助の眼を狙って、これだけ効果的に銭を叩き付けられるのは江戸広しといえども、投げ銭の手練で有名な、銭形の平次の外にあるはずはありません。

商売敵の平次が、何か含むところがあって、利助の眼を潰そうとした――と聞いたら、江戸中の岡っ引は何と言うでしょう。弁解して信ずる人は信ずるでしょうが、当の利助さえ十二分の疑念を持っているくらいですから、まず百人の九十九人までは、平次に不利益な疑いを抱くことは判り切っております。