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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

「…………」

平次は全く二の句が継げませんでした。この女の強かさは、悉く解っておりますが、獄門になった綱吉が、美色に溺れて、この女の罪まで背負って死んでしまったので、表向きからいえば、お勢に悪いところは少しもなかったのです。

「それより親分、石原の利助親分が、投げ銭で大怪我をしたって、世間では銭形の親分を疑っていますよ」

「何?」

「疑いというものは、まずそうしたものさね。海雲寺の富籤だって、当り札を綱吉から預かっていた私が悪いと言うならともかく、それ以上に立ち入って疑うのは、ちょうど、利助親分が、銭形の親分を疑うようなものじゃありませんか」

「…………」

「さようなら、銭形の親分、また逢いましょうね」

お勢は身を躱すと、柳橋の方へ、雲を踏むようにユラユラと歩き出しました。

「待った! お勢」

「私?」

「お前は今どこにいる」

「囲われは懲り懲りしちゃったから、近頃は小唄の師匠よ」

「どこにいる」

「柳橋」

「ツイそこだな」

「遊びにいらっしゃいよ、親分」

平次は黙って、夕陽の中に立ち尽しました。柳橋で小唄の師匠をしているというのは、おそらく嘘はないでしょう。それにしても、この女は、腑に落ちない事だらけです。