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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

ガラッ八が帰って来たのは、その日も暮れ近くなってから――。

「親分、解りましたぜ」

相変らず間抜けな声を路地から張り上げます。

「何が解ったんだ、――まア入れ」

と平次。

「姫路の御藩中には、昔も今も藤枝蔵人という方がありませんよ」

「フーム」

「成滝近江という人は確かにあったが、三十年ほど前不都合のことがあって、永のお暇になったということで――」

「フーム、面白いな、その成滝近江という人は、人に討たれたわけでも、人を討ったわけでもなかったのか」

「殿の御不興を蒙ったのは、御蔵番をしているうちの金の不始末で、人を斬るような人でも、人に斬られるような人でもなかったそうです。姫路を立退く時は、男の子を一人親類に預け、美しい後添えの女房をつれて江戸へ行ったということで」

ガラッ八の話はあまりに予想外です。

「その親類に預けた男の子は何という名だ」

「勇之進と言ったそうです。これも十年ばかり前に、朋輩と仲違いをして、浪人をしたという話です」

「人相を聞いたか」

「勇之進は薄あばたで、頑固で高慢な、醜男だったそうですよ」

「なるほどそいつは面白そうだ、――行ってみようか、八」

平次は立上がりました。