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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

「精が出るね、藤六」

八五郎は声を掛けながら、手でも握るように側へ寄りました。

「ヘエ、小屋が休むと、遊んでもいられません」

親孝行の看板にならない日は、たった一日の暇でも、漁に出なければならないほど切詰めた暮しをしているのでしょう。

「銭形の親分が、お前に訊きたいことがあるんだとよ」

「ヘエ」

藤六は困り抜いた様子で立竦みました。小屋へ引出されたせいか、髯はよく当っておりますが、三十前後の逞しい顔は、赤銅色に焦けて、正直そうなうちにも、純情家らしい眼が人をひきつけます。

「金の茶釜は本当にお前の網に掛ったのかい」

「…………」

「本当の事を言ってくれ、藤六」

平次の調子はひどく打ち解けておりました。

「親分さん、そいつは訊かないで下さい。私は困ることがありますから」

藤六は泣き出しそうな顔になります。

「それじゃ、これ一つだけ聞かしてくれ。お前は見世物小屋へ好きで出ていたのかい、それとも、親孝行したさのお前が日当が欲しさに出ていたのかい」

「…………」

藤六は唇を噛みました。深い深い苦悩が、その頬をヒクヒクと痙攣させます。

「それは誰にも迷惑をかける話じゃない、お前の心持だけの事だ、――聞かしてくれ」