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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁
四
夕陽の砂浜に立って、その襤褸からも後光が射しそうで、増屋の佐五兵衛が爪を磨ぐのも無理のない美しさです。
「とんでもない、お前をやってなるものか。増屋の旦那は、名代の※々親爺だ、――俺が見世物になるくらいの事は、何の、――親不孝の業さらしだと思えばあきらめがつく」
「だって、兄さん」
兄妹二人の美しい争いを、平次と八五郎は、黙って見ているより外に工夫もありません。
「八、帰ろうよ」
平次はいきなり言い出しました。
「金の茶釜は、親分?」
二人の兄妹を見送りながら、八五郎は不審の眉を顰めます。
「鼠でも引いたんだろうよ、あんなものは二度と出て来ねえ方がいい」
「?」
ガラッ八は黙って平次の意志に引摺られるより外にはありません。
貧しい家と、美しい夕陽と、並んで帰って行く兄妹の後ろ姿を見ながら、変な心持で平次とガラッ八は街の方へ引揚げます。
四
それからしばらくの間、金の茶釜の話は、おくびにも出ませんでした。
「親分、変な事になりましたぜ」
ガラッ八がやって来たのは三日目です。
「何が変だ」
「金の茶釜の事ですよ」
「その話ならもう止してくれ、俺はもう聞きたくない」
平次は以ての外の手を振ります。