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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

五

、誰にでもその違いは判る程度のものだったことです。

「銭形の親分、御覧の通りの始末だ。誰の所為というわけではないが、どうか嫁を探してやって下さい。六人の花嫁を一緒に探して下されば、それに越した事はありません。万一の事があったら――」

伊勢直の主人はゴクリと固唾を呑みました。

「面目次第もございません、平次の男に賭けて、キッと探し出してお目にかけます。三日と言いたいが、せめて後五日、この月中には何とかいたしましょう」

言葉は柔かいが、平次の胸の中には、勃然として、命がけの決心が定ったようです。後ろ指をさされるような心持で、そのまま外へ――。騒ぎを聞いた近所の人が往来へ垣を築いて、闇の中には物々しい囁きが微風のように動きます。

五

「おっ母ア、家に居なさるかい」

「あら親分」

お静は平次を迎えてイソイソと立ち上がりました。平次の許嫁になってからは、両国の水茶屋へ出るのは止してしまって、八丁堀の与力、笹野新三郎のところへ、手不足の時だけ手伝うのがせいぜい、大抵は家にいて、母親を相手に、嫁入りの心支度ともなく、針を持つ日の多いこの頃だったのです。

この時、お静は、平次とは九つ違いの十八、厄前に祝言の盃だけでも済ませるつもりで、仲人まで立てておりましたが、お上の御用の多い平次は、せめて春永にでもなったら――と、一日延しに延し