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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

新三郎は血を吐く思い、次第に力の抜ける掌に、わずかに身体を支えて悲憤の眦を裂きます。

「まだ解らないのか。今下の舟にいる兄哥に、磔柱を背負わせて、その餓鬼を脅かしたり、鈴ヶ森から梟首を持って来て、窓の外へ掛けたのは、みんな俺達の深い怨みを思い知らせるためだったよ――。血の巡りが悪いからお前は気がつかなかったろうが、何を隠そう俺達はな、――八合判のいかさま枡を使ったという罪で、三年前に獄門になった、米屋――越後屋勇助夫婦の忘れ形見だよ」

「えッ」

「悪い番頭が勝手にそんなものを拵えて、自分の懐を肥やしていたのを、何にも知らない俺達の親父とお袋が罪を背負わされ、いかさま枡は罪が深いというので、鈴ヶ森で白髪首を並べて梟されたことは、よもや忘れはしめえ、みんなお前のした事だよ。その上、世上の憎しみが加わって、お袋が臍くりでやらしていた、この茶店まで立ち腐れになり、俺達二人は長い間食うや食わずの路頭に迷った上、讐が討ちたいばかりに伝手を求めて、弟の俺がお前のところへ奉公に上がったんだ」

「…………」

「いかさま枡を拵えた張本人の番頭は、それっきり行方知れず。俺達兄弟の怨みは、両親に縄を打ったお前――与力笹野新三郎にかかるのは当り前の事じゃないか」