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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

銭形平次捕物控

一

一

「親分、退屈だね」

ガラッ八の八五郎は、鼻の穴で天文を観るような恰好を取りました。

「呆れた野郎だ。小半日空を眺めて欠伸をしていりゃ、猫の子だって退屈になるよ。庭へ降りて来て手伝いな。跣足になると、土が冷やりとして、とんだいい心持だぜ」

平次はそう言いながら、せっせと植木鉢の世話をしております。

青葉と初鰹と時鳥で象徴される江戸の五月は天気さえよければ、全く悪くない心持でした。いきなり飛出して、母なる大地の膚に、跣足で触れる快さは、人間のもつ一番原始的な素朴な望みだったかもわかりません。

だが、八五郎は違います。

「そいつはあんまり粋な恰好じゃないぜ、親分」

若い親分平次の、尻を端折った後ろ姿を眺めて、八五郎はニヤリニヤリと笑っているのでした。

「粋事で植木の世話をする奴があるものか。日向へ寝そべって、お先煙草を一と玉煙にする野郎だって、大した粋じゃあるめえ。煙草は構わねえが、縁側を焼跡だらけにするのだけは遠慮するがいい。店賃がキチンキチンと入ってないから、大家へ気の毒でならねえ」

「ヘエ、――親分でも店賃を溜めるんで? ヘエ――」

「何を感服仕るんだ。