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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

それは、谷中に蓮華往生のあった少し前のこと、疑うことを知らない江戸の人達は、ささやかな天霊様の祈祷所を、瞬く間に三倍五倍に拡張させ、疑懼と好奇まで手伝って、天霊様を素晴らしい魅力に拵え上げてしまったのでした。

「そいつは大変なことになったかも知れないよ、八」

「何が大変なんで、親分?」

八五郎の善良な心には、平次の恐怖がどうしても呑込めません。

「叔母さんが、天霊様にこったのは、近頃のことかい」

「二た月ばかり前からですよ」

「どうかすると、二度と帰らないかも知れない」

「親分、心細いことを言っちゃいけません」

ガラッ八もすっかり脅かされてしまいました。

「叔母さんの臍くりはどれほどあったか、手前にゃ解るまいな」

「解っていますよ、目星いものを売ったりなんかして、掻き集めた金は十五両」

「フーム」

「まだ家作が二三軒、貸しが二三十両あるはずだが、そいつは急には集まらねえ。旅へ出る前に、十五六両掻き集めたのがせいぜいでしたよ」

「よくそんなに持っていたんだね、――身上をみんな持出した人でなきゃ、命には間違いがないかも知れねえ」

平次は枕から頭をあげたまま、熱っぽい額を押えて何やら考えております。