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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九)不死の霊薬(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,106 字 · 292 頁

青空文庫

「暮し向きだって、それはそれはお気の毒なくらい粗末ですよ、貧乏人の私どもだってあんなことはありません。雑穀飯に一汁一菜で、どうかすると塩を嘗めながら召し上がっていらっしゃいます」

金棒曳らしい女が、鼻をすすりました。

「ヘエ――、誰がそれを見たんで?」

八五郎は一本横槍を入れます。

「お勝手もお居間も見通しですよ、嘘だと思ったら、祈祷所の裏を覗いて御覧なさい」

女は少し不機嫌な様子で、紫の幕を絞った祈祷所の裏を指さしました。

八五郎はフト立上がって、祈祷所の後ろを覗くと、奥も底もないお勝手と居間があるだけ、粗末な調度の中に、二三人の若い娘が、夕食の仕度らしく身軽に立ち働いております。

やがて、祈祷所の先達と言われる四十男が出て来ました。九郎次というのが俗名で、仏学も儒道も一と通りは修めたうえ一夜豁然大悟して、天霊道を開いたという人物、総髪に一種異様な法服を着け、手には中啓を持っていましたが、態度が思いの外気さくで、流行神に付きものの虚仮おどかしな尤もらしさはありません。

お神楽堂へ出て来るような、緋の袴の少女が四人、灯明と供物を持って入って来ました。