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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

「相変らずお前はお先っ走りだね、庭の雪には下駄の跡があったんだよ」

「ヘエ――」

「鎌鼬がまさか下駄を履いて来はしまい」

と、平次。

「それじゃやはり人間かな」

どうもはなはだ血の廻りが宜しくありません。

「お市とかいう女房の喉笛を下から飛付いて掻き切ったんだ。とにかく人間には相違ないだろう」

「佐吉夫婦に怨みのある人間はありませんか」

「ありすぎるほどだ」

「厄介な野郎だネ」

「角兵衛獅子の親方と、女衒と、金貸しをやってたんだ。どこに敵がいるかわかるものか」

「ヘエ――」

「ここで考えたって始まらないよ。とにかく、行ってみるがいい、思いの外手軽に解るかも知れない」

「親分は?」

「俺はそれからの事にしよう。他に用事もあるから、とにかく、今戸の殺しはお前に任せるよ。いいかい、ガラッ八」

「弱ったなア」

「弱ることがあるものか、八五郎もこの辺が手柄の立て所じゃないか」

「そういえばそれに相違ないが」

子分思いの平次は、これほどの手柄を、ガラッ八に譲ってやるつもりでしょう。二つ三つ肝腎な注意をすると、わが子の初陣を送り出す親のように、緊張した心で今戸の現場へ送り出してやるのでした。