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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

「いつからここに居るんだ」

「この三月の出代りからだアよ」

間違いもない相模訛、少し眼脂が溜って、傍へ寄るとプーンと匂いそうです。

「桂庵は?」

「そんなものは知らねえだよ」

どうも少し日当りの悪い人間らしくもみえます。それに、五六貫目の千両箱を三つ、あっという間に持出すにしては、この女は少し弱すぎるでしょう。

「もういいよ、向うへ行って猫の子とでも遊んできな。八兄哥、外廻りを見るか」

万七は先に立って、寺の外廻りをグルリと一廻りしました。

「おや」

ガラッ八は寺の後ろの墓地――取っつきにある、新仏の土饅頭の前に立止りました。

「どうしたい、八兄哥」

と追っかけるように清吉。

「塔婆が裏返しだぜ」

「なるほど、子供の悪戯だろう」

向うを向いている塔婆を引っこ抜いて、万七は土饅頭の上に正面を向けて立ててやりました。

「昨日は住職がいなかったんだね」

「そうだよ、目黒へ御用で行って薄暗くなる頃帰った」

「すると、この墓は早くて一昨日葬ったんだが、昨日の大夕立の後で、また掘り返していますぜ」

「な、何だと」

ガラッ八は大変な事に気がつきました。

「塔婆の戒名で見ると子供のようだが、それにしちゃ土饅頭が大きすぎはしませんかね、親分」