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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

平次はそういった見当で、橋の下、石垣、川の中、近所の物置、床下など、隈なく捜しましたが、何としても見つかりません。

ちょうど一と月目。

平次は捜し疲れて、お通の茶店の奥に、うつらうつらと居睡りしておりました。

「おや、もう正午かい」

上野の鐘を遠く聞いて、思わず起上がると、目の下の川の水肌に、何やら光る物が浮いております。平次はそのまま手摺を飛越えて、三尺の空地に腹這いになって、水の上をジッと見詰めました。

「灰吹の蓋だ。――流れないのが可怪しいな」

棒を持って来てヒョイと突いてみると、蓋の上の取手に紐が付いて、何やら水の底に沈めてある様子です。

「解った、これだッ」

平次の頭には、電光のような智恵が働きました。あれからちょうど一ヶ月目の新月、お月様の工合で潮のさしようが同じになったので、ちょうど真昼の干潮時に、水肌にすれすれに浮かした目印の栞が見えたのでしょう。黒塗りの灰吹の蓋ですから、水肌からちょっと下にあっては、断じて人目につく道理はありません。

それから船を出して、紐を手繰らせると、その下に千両箱が三つ、今度は正真正銘の、山吹色のを一パイ詰めたのが引揚げられました。