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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁
七
これが不思議と心掛けの良い女で、美しくも優しくもあったのですが、なにぶんの病身、堀留の本宅に置くわけにも行かず、根岸にこんな立派な寮を建てて、女手に飽かして住まわしてあるのだということでした。
その女は、お米といって、不思議に鈴の音を愛し、長い間に買い集めて家の中は鈴だらけ、召使を呼ぶにも食事を知らせるにも、いちいち鈴を鳴らすのだと聞いて、平次はすっかり有頂天になりました。
門を入って耳を澄ますと、なるほど秋の空気に響いて、どこからともなく、床しい鈴の音が聞えて来ます。
「これだこれだ」
平次は独り言を言いながら、寮の玄関にかかりました。
七
寮の玄関には、大きい鈴がブラ下がっておりました。その頃では珍しい試みで、なるほど「鈴屋敷」だと思いながら、二つ三つガランガランとやると、玄関の障子が滑らかに開いて、
「どなた様で――」
首をかしげたのは、忘れもしないガラッ八に跟けさした娘、なるほど桃色の啖呵ぐらいは切りそうなお侠な娘です。
「あッ、お前さんはやはり此家の人か」
「…………」
娘はサッと顔色を変えて、そのまま障子を締めそうにするのを、
「どっこい待った。