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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

お染はなかなか引きそうもありません。

「そうも行かない――こうしよう、家にゴロゴロしている八五郎、大した賢い人間じゃないが、その代り毒のない、話の面白い男だ。それを連れて行って、今晩一と晩用心棒にするがいい。智恵は大したことはないが、力だけは人の二人分もある」

「…………」

お染は何か腑に落ちない顔をしておりますが、さすがにこの上は争うこともなりません。

「ガラッ八、そこに居るのか」

「ヘエ――」

「お嬢さんとお染さんについて、根岸まで行ってくれ、今晩は向うへ泊るんだ」

「ヘエ――、あまり智恵のねえ人間でも役に立ちますかい」

「馬鹿ッ、立ち聞きしていたのか」

と平次。

「そういう訳じゃねえが、何しろこのお屋敷が広いから、あんな大きな声で話しゃ、どこの隅っこに居たって聞えますよ。岡っ引はよく人の話に気を付けて聞くがいいって、日頃親分も言いなさるし――」

「呆れた野郎だ」

「もっとも、あっしの悪口が始まりそうになった時は、聞いちゃ悪かろうと思って耳の穴へ指を突っ込んでみたんだが、こいつは長く続きませんや、気色が悪くて――」

「馬鹿だな、お前は。まア何でもいいやな、お嬢さん方と一緒に出かけるんだ」