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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,455 字 · 290 頁

青空文庫

「今晩ですか?」

「お町が殺された刻限に、お前さんはどこに居なすったか訊きたいんだ」

平次の舌は、恐ろしく辛辣です。

「ヘエ、――お町は戌刻(八時)少し前に殺されたって話ですから、その時分私は町内の銭湯へ行っていましたよ」

「銭湯? 此家では風呂は立ちませんか」

と平次。

「ありますよ。雇人が入るんで、毎晩立ちますが、私は疳性で、流しの広い、上がり湯のふんだんにある銭湯でないと、入ったような気がしません」

「なるほど」

「私が内風呂へ入らないのは、家中の者が皆んな知っております」

「それにしても、宵から銭湯は、遠慮がなさすぎはしませんか」

「ヘエ」

主人の甥というにしても、店の者としては少し我儘が過ぎるようです。

「何刻ぐらい入っていましたかい」

「一刻(二時間)とも入りはしません」

「そんな長湯ですか、お前さんは?」

「へッ、少し稽古事をしているもんで」

「なるほど」

小唄の師匠へ行って、一刻も変な声を出して唸って、帰りには手拭を濡らして、銭湯へ行ったような顔をするというのは、その頃の大商人の奉公人にはよくあることでした。

これは銭湯と、町内の稽古所を調べさえすれば判ると思ったのでしょう。