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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

「なるほどね」

「それから、あの経蔵には、入口が一つと、窓が二つある、その一つ一つを開けたり閉めたりして囃すと、音は酒井様のお邸に響いたり、佐竹様の木立に響いたり、どうかすると、大川の方へ抜けたり、いろいろの方角に聞えるんだ。今度一つ試してみるがいい」

「ヘエ――そんな事もありますかねえ」

「まだ判らない事があるかい」

「あの日、昼一度廻ったのに、夜もう一度六軒の家を廻ったのは?」

「あれは大失策さ、昼は鋸目にばかり気を取られたので、夜もう一度狸囃子をやった場所を探しに行ったんだが、暗くて何にも判らなかったんだ」

「狸狩りは?」

「そこで、翌る日狸狩りということにして、土蔵か、穴蔵かともかく、どの方角へも自由に囃子の音を響かせるにいい場所を探したんだ。お蔭で銭形の平次は間抜けになって、石原利助が器量を上げたのよ」

「つまらない事になったものですね」

「利助兄哥も、これで引込みが付き、俺もお品さんへの義理が済んだというわけさ」

平次はそう言って豊かにガラッ八を顧みました。頭の鈍いガラッ八にも、何となく失策平次の尊さがわかったような気がしました。