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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
二
あんな小汚いのはこっちで御免だ――まずこの八五郎がしょっ引いて手活けの花と眺めたいのは――」
「大きく出やがったな」
「横町の中江川平太夫の娘お琴さん」
「わッ、助けてくれ」
平次は大仰な身ぶりをしました。横丁の中江川平太夫というのは、北国浪人で六十幾つ、髪が真っ白な上、進退不自由の老人ですが、界隈切っての物持で、その上、養い娘のお琴は、少し智恵は足りないと言われておりますが、見てくれだけは、凄いほどの美人でした。
これくらいの娘になると、ガラッ八とは大釣鐘に提灯で、どう間違っても一緒になれっこはありません。ガラッ八か冗談の題目にしたのも、平次がすっ頓狂な声を出したのも、掛合噺程度以上のものではなかったのです。
二
その頃、神田、日本橋、下谷へかけて、通り魔のように荒し廻る兇賊がありました。
仲間という者を持たぬ、たった一人の仕業のようですが、梁を渡り、庇を伝い、天窓を切り破り、格子を外し、鼠か鼬のように忍び込んで、人を害め、財を掠め、姿も形も見せずに煙のごとく消えてしまうのです。
腕も抜群ですが、何よりの特色はその軽捷な身体で、もう一つの特色は、妨げる者は殺さずんば已まない、鬼畜のごとき残虐性でした。