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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
三
早い話――。
二人の美しい女、お勢とお品が、本所中の人目をひきながら、同じ町内のお勢の家まで辿り着いて、抜け裏の奥の格子戸を開けると、いきなりプーンと鮮血の臭い。
「あッ」
いくらか物馴れたお品が真っ先に飛上がると、入口の四畳半に、下女のお寅が、紅に染んで倒れていたのでした。引起してみると、後ろから、鈍い重いもので、後頭部をやられ、頭の皿を打ち割られて物をも言わずに死んでしまった様子です。
すぐさま町役人にも知らせ、お品の父の利助は病中で、二三の子分が駆けつけましたが、なにぶん目先の見えるようなのは一人もありません。うっかりすると機会を失って、親の利助の手落にならないものでもあるまいと思ったお品は、そこから駕籠を飛ばして、神田の平次を呼び出しに来たのでした。
三
「親分、この暑いのに、本所まで行って下さるのも大変でしょうから、一応智恵だけでも貸して下さいませんか。私や子分達にはどうにも見当のつけようがありません」
お品の折入っての頼みです。この娘の父親には、長い間白い眼で見られた平次ですが、近頃はすっかり打ち解けた仲でもあり、かつ、病気で寝ているとあっては、凝としていられる平次ではありません。