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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
五
「親分、何にも来ませんね、もう亥刻(十時)過ぎましたぜ」
蒸暑い晩でした。八五郎はすっかり茹って、愚痴を言い始めます。
「静かにしろ、あッ、煙草入などを出しちゃならねえ」
「驚いたね、どうも」
「手前は銀町の方を見ているんだ、俺は東湊町の方を見張ろう、松平越前守様御屋敷などはどうでもいい」
五
「あッ、船」
「シッ、その船が怪しい」
二人は物蔭に隠れました。銀町二丁目、三の橋の橋詰に着けた小舟が一艘、中から二人の人間が無提灯で大きな荷物を背負ったまま、長崎町一丁目の方へ入って行ったのです。
「捕まえましょうか、親分」。
「逃がしちゃ大変だ、――それ、大野屋の裏へ入ったろう。今に出て来るに決っているから、舟の中に隠れていよう」
「そんな事をしても構いませんか」
「構わねえとも、どうせ抜け荷を積んだ舟だ」
二人は曲者の出た小舟の中へ、音もなく潜り込みました。
「隠れる工夫はないか、八」
「こんな小さい舟じゃどうすることも出来ませんや」
「弱ったなア、抜け荷を扱う人間は口が堅いから、ここで荒立てると、親船が判らなくなる。大川から芝浦、洲崎へかけて、あんなにたくさん船が居るから、どれが抜け荷を扱う親船だか見当の付けようはねえ」