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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁
「閻魔大王がくしゃみをしそうですぜ」
ガラッ八は袖を引きます。
「馬鹿野郎、そんな罰の当ったことを言っちゃならねえ」
「菩薩方の張り店ときた日にゃ親分――」
「黙らないかよ、八」
二人は漸く評判の普賢菩薩の前にたどり着いておりました。
「これは大したものだ、まるで作が違う」
白象に乗った、等身大の菩薩像は、見世物小屋の表の方、囃子方の陣取った中二階の下あたりに据えてあります。
少し彩色は濃厚すぎますが、実に非凡の出来栄え、右手に金剛杵を持ち、左手に金剛鈴を執った慈悲の御姿、美妙と言おうか、端麗と言おうか、あまりの見事さに平次もしばらくは言葉もありません。
「親分、あの仏様の眼を見てやって下さいよ、少し濡れているでしょう」
とガラッ八。
「眼ばかりじゃねえ、宝冠の瓔珞から、襟も肩もぐっしょりだ。頭の上から涙を流すのは、仏様にしても可怪しくはないか、八」
「ヘエ――」
「冠も頬も襟も汚れているのは、勧進元の細工にしちゃ念入りすぎるぜ、それに、夜が明けてからもう二た刻(四時間)も経っているのに、涙の乾かねえのも不思議じゃないか」
平次は稼業柄で、妙なところへ気が付きます。