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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

御覧よ、先刻お前さんに嘗められたお駒ちゃんの頬が、火脹れになったじゃないか」

お勢がズケズケとやりながら、一番若くて美しい芸妓お駒の頬を指すのでした。

「へッ、自分が嘗められないんで口惜しかろう」

「呆れたよ」

際限もありません。

「もうよかろう。二人が噛み合っていると際限もない、――鬼は二人の方が面白いから、左孝も鬼になるがいい、その代り灯を消して捕まえるんだ」

伴三郎はこんな事を言い出します。

「それ旦那があんなにおっしゃるじゃないか。鬼になるのは私のような仏性の者に限るとよ」

左孝と白旗直八は背中合せに立って目を縛り、同時に広間中の灯をみんな消しました。

めんないちどり、手の鳴る方へ、――

丸くなった男女の輪が、ドッと崩れると、それを追って二人の鬼が、手拍子と、哄笑と、悲鳴の中を泳ぎ廻ります。

いつの間にやら伴三郎は席を外し、お勢もお駒も見えなくなりました。左孝の悪ふざけに驚いた女どもは、縁側へ、次の間へ、廊下へと灯を追って溢れ、それを追って二人の鬼は、薄暗い中をどこまでも、どこまでもと追いすがります。

が、しかしその歓楽も尽きる時が来ました。恐ろしい血の終局が、熱狂した興奮から、氷のような恐怖へ、十幾人の一座を叩き込んでしまったのです。