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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(六)結納の行方(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,597 字 · 289 頁

青空文庫

まして平次が盛んだった頃の富突きというものは、随分怪しげなもので、谷中の感応寺(今の天王寺)、湯島天神、目黒不動尊などで興行した、いわゆる天下の三富といった、格式のあるのは別として、市中に催された富興行のうちには、随分いかがわしいものも多かったと言われております。

元来は、社寺の修繕新築の寄進などに行われたものですが、後にはすっかり射倖機関のようになってしまって、多い時には江戸中に二十五箇所の富があったというくらいです。一番当りは千両から、少なくも百両二百両というのですから、その当時の相場にすると一と身上を起すわけで、江戸中の人間を夢中にさしたのも無理のないことです。

その日、海雲寺に集まったのは、五六千人、広い境内も身動きもならぬ有様。本堂正面には青竹の逞しい手摺を組んで盛装の僧が十数人、朝から般若経を上げております。その頃はまだ、大検使小検使などいうことはありませんが、寺社奉行からは、係の者が二人出張、町役人、寺の世話人、檀家総代などと、麻裃に威儀を正して居流れます。

香の煙、お経の合唱、梵鐘の伴奏に、次第に時刻がたつと庭一杯に集まった群衆は、真昼の暑さも忘れて、虫のように蠢きます。