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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁

青空文庫

どんな御用でしょう?」

先刻の下女が物に怯えたように、畳の上へ手を突いているのでした。

「風邪? それはいけないな、夏の風邪は抜け難いから、用心なさるがいい、いつから寝なすったんだ」

平次の調子は至って平坦でした。

「昨夜宵のうちからお加減が悪そうでしたが、今朝はもう起きていらっしゃいません」

「そうかい」

「あの、御用は?」

「なアに、大した事ではないが、――隣の畳屋の職人が死んだのをお聞きなすったろう」

「ヘエ」

「あれは、人に殺されたんだと思うんだ。心当りはあるまいね」

「いえ、何にも」

「あの丈吉とかいう男は、時々ここへ来ることがあったかい」

「一度もいらっしゃいません。私などはお顔もろくに知らないくらいで――」

「駒次郎兄哥は時々来るだろうね」

「ヘエ――」

そう言って下女はハッと袖口で口を覆いましたが続けて、

「でも、でもあの、近頃はさっぱりいらっしゃいません」

「そうだろう、大里様のお才さんと近いうちに祝言するそうだから」

「…………」

妙に探り合いのような擽ったい空気です。

「お嬢さんにはお目に掛るまでもないんだが、その代りあの塀のあたりを見せて貰いたいよ、丈吉殺しの曲者が、あの辺から塀を越して行ったかも知れないんでネ」