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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁
六
「それは何でもない事だ。後刻平次という御用聞を遣わしましょうと、はっきり断ってある」
「それでは一と走り」
「あ、これこれ平次、赤井殿の出発の日取りはあと三日の後に迫っている。それまでに千両箱が二つ揃って返らないと、お気の毒ながら赤井殿は腹を召さなければならぬ。解ったろうな」
「おっしゃるまでもございません。今度は平次も死物狂いで、キット風太郎を引っ捉まえて参りましょう」
銭形の平次は八丁堀から小日向へ、初夏の街を大汗になって駆け付けました。
六
旗本赤井左門は、この時四十二の厄年、家柄も人品も不足のない人物ですが、少し疳癖の強いのが瑕で、若い時分には、それでいろいろ問題を起しましたが、四十を越すとさすがにそれも納まって、近頃はなお上様家光公の側近くに仕えて重宝がられております。
「平次とか言ったな、とんだ手数を掛けるが、なにぶん宜しく頼むぞ」
「ヘエ――」
二千八百石の殿様から、泥棒の手口を聴くわけにも行きません。平次は一度左門の前を滑って、用人の足尾喜内から、何かとその日の様子を聴き取りました。
盗まれたのは小判で二千両、これは型の通り四方金具の厳重な箱に入れられて、御墨付と一緒に奥座敷の床の間に飾り、隣の間には足尾喜内や家中の若侍、若党などが交代で寝ずの番をしておりました。