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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁
三河在から、万歳の太夫で江戸へ来たというのは、世間の悪口にしても、ともかくも、ここへ根をおろしてざっと三十年、今では万両分限の一人として、江戸の長者番付の前頭何番目かに据えられる嘉兵衛ですが、慈悲善根の心がけが篤く、町内で評判の良いことは、平次も悉く知っております。
「とりわけ恩を着せているのは?」
と平次。
「私の口から言っては変だが――番頭にでも訊いて下さい」
平次もそれ以上は押して訊きません。
番頭手代、小僧下女の果まで一応は逢ってみましたが、何の取立てたこともありません。踊屋台へ行って、お三輪の死骸を見付けたという下女のお崎は、三十前後の達者な年増で、踊屋台の揚幕の蔭に、倒れていたお三輪の美しさ、いたましさ、そして凄さを、委曲詳細に喋舌り捲りますが、それにも、何の得るところもなかったのです。
「離室へ行ってみましょうよ、親分」
「俺もそれを考えていたんだ」
三河屋の母屋から、踊屋台へ行くには、どうしてもここを通らなければならないのが、離室の住人にひどく重要な役割を持たせます。
「七平、――まだ起きているのかい」
ガラッ八は見知り越しらしく、親しい声をかけると、