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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁
七平の舌には、何となく毒を含みますが、病人なるが故に、人にも世にも捨てられているせいでしょう。
「お前その口笛をよく聞いて知っているだろうな」
「…………」
「他の人の口笛と専次の口笛と間違えるようなことはあるまいな」
「間違いっこはありません。こんな工合でしたよ」
七平は大きな唇を歪めて、奇妙な節の口笛を吹いて聴かせました。
「そんな事でよかろう。ところで、もう一つ訊きたいが、三河屋の主人を怨んでいる者はないだろうか」
と平次。
「とんでもない、あんな仏様のような旦那を怨む者があったら、第一、十何年越し世話になっている、この七平が承知しません」
「お前はどんな引掛りでここに居るんだ」
「遠縁の奉公人でしたよ。十二三年前、箱根へ旦那のお供をして行って、崖から落ちて大怪我をして、それからズーッとここに置いて養って貰っております」
「不自由はないだろうな」
「不自由なんてものは、どこの国の言葉だか知らないくらいで、へッ、へッ」
七平は泣き出しそうな顔をして笑うのです。活動的な男が、活動を奪われて、何不自由なく暮していて、倦怠感を持て余しているといった様子でした。
「三河屋さんの世話になっているのは町内に何軒くらいあるだろう」