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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁
銭形平次捕物控
一
一
芝三島町の学寮の角で、土地の遊び人疾風の綱吉というのが殺されました。桜に早い三月の初め、死体は朝日に曝されて、道端の下水の中に転げ込んでいたのを、町内の人達が見付けて大騒ぎになったのでした。
傷というのは、伊達の素袷の背後から、牛の角突きに一箇所だけ、左の貝殻骨の下のあたり、狙ったように心臓へかけてやられたのですから、大の男でも一たまりもなかったでしょう。刺された拍子に転げ込んだものと見えて、下水の中は蘇芳を流したようになっております。
この辺の縄張は、柴井町の友次郎という御用聞、二足の草鞋を履いているという悪評もありますが、まず顔の通った四十男。早速駆けつけて、役人の検屍の前に、一と通り、急所急所に目を通しました。
「親分、ひどい事になったものですね」
「お、八五郎か。銭形の仕込みでたいそう鼻が良いな」
「からかっちゃいけません。まだこの死体を見付けてから、半刻(一時間)と経たないって言うじゃありませんか。いくら鼻がよくたって、神田から駆けつける暇なんかありゃしません」
「じゃ品川の帰りって寸法かい」
友次郎はどこまでからかい面だかわかりません。
「とんでもない、川崎の大師様へ日帰りのつもりで、宇田川町を通るとこの騒ぎでしょう」