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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(四)城の絵図面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,179 字 · 280 頁

青空文庫

まさか真物を盗んで、偽物を置くとは思わないからなア」

平次もこんな馬鹿な盲点に引っ掛って騙されたことはありません。

「太吉を殺したのは、どうしたんでしょう、親分」

「何でもないよ、太吉はなんかの都合で大垣の仕業と知って、強請ったのさ。相手は、悪者ならもう少し考えるだろうが、大垣のような肌合の人間だから、我慢がならなかったろう。一度は金をやったが、二度目には斬られたのは自業自得というものだろう」

そう聴けば、何の疑いも残りません。

「お杉は?」

「明日行って訊くがいい、――多分、大垣の縁故の者だろう。金ずくでやれる仕事じゃないよ。あんな危ない仕事をさした上、口を塞ぐ気になったのは、大垣も少し血迷ったのだろう。家も屋敷も大事には相違ないが、妾狂いの殿様を江戸へ呼ぶために、殺さなくともいい人間を虫のように殺すのは少し罪が深いね」

平次は薄寒そうに襟をかき合せました。桜の莟のふくらむような生温かい春の宵です。寒いのはたぶん平次の気持のせいでしょう。