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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

平次は盃を挙げました。大きい膳に並べた料理は、ひどく貧乏臭いものですが、お静の心尽しが隅々まで行亘って、妙にこうホカ/\とした暖かいものを感じさせるのです。

「明神様の宵祭か――一升提げて来るんでしたな、親分」

八五郎は鼻水を横なぐりに拭いて、盃を頂くのです。この涙もろい男は、どうかしたらもう湿っぽくなって居るのかも知れません。

でも、二つ三つ傾けると、陶然として、天下泰平になる八五郎です。

「親分、ちょいと来て下さい」

入口の格子を叩いたのは、顔見知りの隣町の指物職人というよりは、小博奕を渡世にして居る、投げ節の小三郎という男でした。

「何んだ、何があったんだ」

平次は盃を置いて中腰になって居ります。小三郎の隠やかな調子のうちには、ガラ八の「大変」以上の緊迫したものを感じさせるのです。

「横町の師匠がやられましたよ」

「横町の師匠?」

此辺は師匠だらけ、生花、茶の湯から、手踊り、小唄、琴、三味線、尺八まで軒を並べて居るので、平次も一寸迷ったのです。

「踊りの師匠――江戸屋園吉のお園さんで」

「お園さんが殺された?」

八五郎は横から口を出しました、少しホロリと来て居ります。