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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

暫くその中をあさって居た平次、間もなく味噌汁臭い縞の前掛を見付けると

「こいつは誰の前掛だ」

「与之助どんので」

「しめた、八、お前は裏庭へ廻れ、大急ぎだ、鳥が飛ぶぞ」

八五郎が庭へ飛降りると同時に、平次は階子段から二階に飛上りました。が、其処に唸って居る筈の与之助の姿は無く、床だけは生温かく敷きっ放しになって居ります。

「野郎ッ、神妙にしやがれッ」

庭の方から八五郎の声でした。窓から見下ろすと、薄暗くなった裏庭の真ん中で、与之助と八五郎は組んずほぐれつ揉み合って居ります。

*     *

「あの与之助の野郎が下手人とは驚きましたね、何んだって、あんな事をしたんでしょう」

帰る途々、八五郎はまた平次に絵解きをせがみます。

「佐渡屋を乗取る気でやったのさ、その上お絹が心の中では『鬼の面』の品吉に惚れ切っているし、他人の品吉が佐渡屋の婿になっちゃ、血の繋がりのある与之助は、我慢が出来なかったのだろう」

「一人でやった仕事ですか、あの桟敷を落したのも」

「直次郎に手伝わせたのだよ、――お夏が聴いたという『佐渡屋の者を根絶やしにする』と言った相談は、あの二人さ、桟敷を落して自分達も水に入り、お絹だけを助ける積りでやった仕事だろう。