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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 鬼の面

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控 鬼の面(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,082 字 · 257 頁

青空文庫

そんな話をして居るところへ、隣室へ退いた内儀のお仲は、娘のお由利の手を取らぬばかりに、元の座に戻って来ました。母親のお仲は四十前後、美しさの僅かに残る、平凡な町家の内儀で、娘のお由利は、品は無いが、丸ぽちゃで、愛嬌があって、いかにも可愛らしい十八娘でした。

「銭形の親分さん、いろ/\娘に訊いて見ましたら、大変なことを申します」

内儀のお仲は少し息を弾ませて居ります。

「大変なこと?」

「娘は、まア、私は驚いてしまいました、あのお小姓を捜し出してくれと、飛んでもないことを申します――あれは大泥棒の人殺しだと申しても聴きやしません。そんな筈は無い、大泥棒の人殺しは他にあるに違いない――と」

内儀が意気込むのも無理のないことですが、浮気な江戸娘の無分別さ、我儘で、惚っぽくて、物の道理もわからないのが、此時代の江戸の市井に、幾多の物語と伝説とを作ったことは事実で、芝居と絵本と、猥らな話で、娘をこう教育した、母親の無分別さも考えないわけには行きません。

「そんな馬鹿なことが」

三郎兵衛は居住居を直して、煙管を逆に取りました。娘を意見し馴れたポーズです。

「でも、娘は、こう言うんです。