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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 頁
ところが、例の精密スケジュールと来ているので、抜き差しならない。結局、石仏見参は、おあずけ。陽のあるうちにと、ハイヤー二台で、由布院へ向かう。
わずか十五分か二十分。もう、せせこましい湯の町は別府湾の海岸線を探さなければ見つからないほど、遠くの眼の下にかすんでいる。
山の手道路もいい。峠へかかってもなかなかいい。鶴見嶽のスロープや、捏山の谷あいをネジ登り始めたが、行けども行けども道がいい。――こう怪しむのは、ぼくら日本人の常識であるが、訊いてみるとやはり「進駐軍が来ましてね」である。ここばかりではないが、こう聞くたびに、毎度、名誉なき感じがする。
別府をせせこましいといったが、それは、こっちのせいで、別府のせいでないことが、いまわかった。何度も来ている所だが、汽船から眺めても、町に泊っても、背後の山岳地帯が、こう奥深い廻廊へ通じているとは、知らなかった。観念的に、うしろは山と決めてしまっている旅客は、ぼくだけではあるまい。事実、伽藍嶽とか、硫黄嶽や、由布嶽にしても、決してやさしくない山容ではある。
だが、峠の城島台へ出ると、もっと意外な視野に出会う。