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だらくろん(ぞくだらくろん)

堕落論・日本文化私観 他二十二篇

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《堕落論・日本文化私観 他二十二篇(だらくろん(ぞくだらくろん))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,198 字 · 171 頁

青空文庫

執拗なる自己探求というものはなかったのである。

彼は現世に縛られ、通用の倫理に縛られ、現世的に堕落ができなかった。文学の本来の道である自己破壊、通用の倫理に対する反逆は、彼にとっては堕落であった。私は然し彼が真実欲する女を口説き得ず姪と関係を結ぶに至ったことを非難しているのではない。人各々の個性による如何なる生き方も在りうるので、真実愛する人を口説き得ぬのも仕方がないが、なぜ藤村が自らの小さな真実の秘密を自覚せず、その悲劇を書き得ずに、空虚な大小説を書いたかを咎めているだけのことである。芥川が彼を評して老獪と言ったのは当然で、彼の道徳性、謹厳誠実な生き方は、文学の世界に於ては欺瞞であるにすぎない。

藤村は人生と四ツに組んでいるとか、最も大きな問題に取組んでいるとか、欺瞞にみちた魂が何者と四ツに組んでも、それはただ常に贋物であるにすぎない。バルザックが大文学でモオパッサンが小文学だという作品の大小論はフザけた話である。藤村は文学を甘く見ていたから、こういう空虚軽薄な形だけの大長篇をオカユをすすって書いていられたので、贋物には楽天性というものはない。