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だらくろん(ぞくだらくろん)
堕落論・日本文化私観 他二十二篇
線上閱讀坂口 安吾《堕落論・日本文化私観 他二十二篇(だらくろん(ぞくだらくろん))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,198 字 · 171 頁
六
併しゴーゴリを読んだあとでは無数の身辺の平凡の中に、我々は奇抜を認めずにいられなくなる。
けれどもモオパッサンにとって、平凡の奇抜な面は必要ではなかったし、奇人の奇抜な面さえ必要でなかったのである。反対にドストエフスキーは平凡人を平凡の面からはどうしても描けなかった。
角度は無限である。めいめいが各々の角度を持たなければならない。けれども如何に多くの贋物があるか。否、真に自らの角度を持ち、しかも之を正しく育てうる人は極めて稀にしかない。
以上は人物の取扱いに就ての作家の角度の一例であるが、角度は勿論人物に限るものでなく思想の取扱いにも働き、否、小説全体に働く。同時に各々の文章、さらに小には一語一語に働くものである。
だがこの小論は文章に就てのものであるために、次にかかる意慾的な文章に就て述べよう。
六
作家の意慾は文章よりはじめて小説全体に行きわたるとは、即ち逆に小説の文章はAなる文章としてあると同時に、小説全体の中のAなる効果としてあるということに他ならない。のみならず、小説は小説全体として完成さるべきものであるから、個々の文章が如何ほど独立した完璧を示すにしても小説全体としての完成を示さなければ高く評価することはできない。