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だらくろん(ぞくだらくろん)
堕落論・日本文化私観 他二十二篇
線上閱讀坂口 安吾《堕落論・日本文化私観 他二十二篇(だらくろん(ぞくだらくろん))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,198 字 · 171 頁
彼の知と理は奇妙な習性の中で合理化という遊戯にふけっているだけで、真実の人間、自我の探求というものは行われていない。自殺などというものは悔恨の手段としてはナンセンスで、三文の値打もないものだ。より良く生きぬくために現実の習性的道徳からふみ外れる方が遥かに誠実なものであるのに、彼は自殺という不誠実なものを誠意あるものと思い、離婚という誠意ある行為を不誠実と思い、このナンセンスな錯覚を全然疑ることがなかった。そして悩んで禅の門を叩く。別に悟りらしいものもないので、そんなら仕方がないと諦める。物それ自体の実質に就てギリギリのところまで突きとめはせず、宗教の方へでかけて、そっちに悟りがないというので、物それ自体の方も諦めるのである。こういう馬鹿げたことが悩む人間の誠実な態度だと考えて疑ることがないのである。日本一般の生活態度が元来こういうフザけたもので、漱石はただその中で衒学的な形ばかりの知と理を働かせてかゆいところを掻いてみただけで、自我の誠実な追求はなかった。
元より人間は思い通りに生活できるものではない。愛する人には愛されず、欲する物は我が手に入らず、手の中の玉は逃げだし、希望の多くは仇夢で、人間の現実は概ねかくの如き卑小きわまるものである。