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しそうとしてのぶんがく

思想としての文学

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《思想としての文学(しそうとしてのぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,809 字 · 408 頁

青空文庫

三

が喜劇と名づけられていることだ。「悲劇」が英雄の没落を取り扱うものである代りに、俗間の普通事を取り扱った本当の劇がこの場合の喜劇の意味であって、悲劇が却って如何に俗物的なものとなっていたかが之で判る。抑々喜劇は社会的批評の必要から産れるものだが、この喜劇が俗物的なもので、之に較べれば悲劇の方が一般に文学的だと考えているらしい悲劇主義的俗物達は、悲劇というものがどんなに封建的支配階級の飯ごとを写した悲喜劇であったかに、注意すべきである。そして、市民の悲劇などというものがあるなら、夫は喜劇に過ぎないと考えられたのだ。神でも人間でもない民衆に悲劇などはあり得ないと。

三

社会階級の対立関係に基いて、俗物の意味が完全に入れ替わることは、科学乃至学問の世界に於ても、文学の世界に於てと、少しも変らない。

今日の大学であるアカデミーは初め、中世の封建的教会大学に対抗して発生したブルジョアジーのイデオロギー的社交団体であったのであり、之は「俗悪」な現世的な自然探究や実験を以て、神聖なスコラ的聖書解釈学に対抗したものである。処が今日ではこの俗物のアカデミーの後進である世界の諸大学自身が、中世的封建大学の後身と合体して了って、極めて神聖なブルジョア大学となって了った。