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しそうとしてのぶんがく

思想としての文学

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《思想としての文学(しそうとしてのぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 209,809 字 · 408 頁

青空文庫

三

術語と云うのは何かと云えば、一定の科学にぞくする世界(学界)の間で一定の意味を以て通用するように、人工的にか歴史的にか、決定されている専門用語の体系のことだ、と云っていいだろう。処で哲学の例の日常性から来る一つの結果であるが、哲学には他の科学とは異って、厳密な意味での専門とか学界とかいうものはない筈なのだし、仮にあったとしても夫を無条件に尊重することは差し控えなければならぬ事情があるのである。無論他の科学に於ても程度の差こそあれこの点は専門家自身及び評論家の、戒心を要する処であるが、哲学が特に日常的であるだけにこの点が著しい。尤もそうは云っても哲学の所謂素人(ファンやディレッタント)に何かの学問上の権利があるというのではないので、ファンやディレッタントとは要するに誤り信じられた哲学の専門性に対する崇拝者や是認者に他ならない。哲学はその日常性を失うことによって、他の科学に較べて最も速く固死する。哲学の純専門的なアカデミズムは、最も速かに哲学の科学的停滞を意味するのである。

こういう特殊な事情にある科学としての哲学は、従ってその専門用語の体系である術語に就いても、特殊な条件を持っている。