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「しなゆうき」

支那游記

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《支那游記(「しなゆうき」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,859 字 · 105 頁

青空文庫

十 戯台(下)

十 戯台(下)

その代り支那の芝居にいれば、客席では話をしていようが、子供がわあわあ泣いていようが、格別苦にも何にもならない。これだけは至極便利である。或は支那の事だから、たとい見物が静かでなくとも、聴戯には差支えが起らないように、こんな鳴物が出来たのかも知れない。現に私なぞは一幕中、筋だの役者の名だの歌の意味だの、いろいろ村田君に教わっていたが、向う三軒両隣りの君子は、一度もうるさそうな顔をしなかった。

支那の芝居の第二の特色は、極端に道具を使わない事である。背景の如きも此処にはあるが、これは近頃の発明に過ぎない。支那本来の舞台の道具は、椅子と机と幕とだけである。山岳、海洋、宮殿、道塗――如何なる光景を現すのでも、結局これらを配置する外は、一本の立木も使ったことはない。役者がさも重そうに、閂を外すらしい真似をしたら、見物はいやでもその空間に、扉の存在を認めなければならぬ。又役者が意気揚々と、房のついた韃を振りまわしていたら、その役者の股ぐらの下には、驕って行かざる紫※(「馬+留」、第3水準1-94-16)か何かが、嘶いているなと思うべきである。