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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
藤吉郎は、黙読していたが、読み終ると当惑顔して、
「これは物騒だ」
と、つぶやいた。
「殿。何事か、半兵衛殿の身に起りましたか」
「いや。……この手紙によると、半兵衛の病は日増しに快方にむかっておるらしいが、その後、今浜の丹羽五郎左衛門が、半兵衛を迎えとって、医師薬餌の手当など、至れり尽せりの親切をしてくれているという」
「それが何で物騒なのでございますか」
「半兵衛には、はや帰りたい心もあるらしいが、丹羽殿にひきとめられて困っているとある。元来、半兵衛重治は、理には屈しぬが情には脆い。彼の博識と智勇はかねて丹羽殿もよく知って、わしの顔をみるたびに、よい者を家中に持ったと日頃から羨望しぬいておる。あまり恩をかけられると、半兵衛を、丹羽殿に取られてしまうおそれがある」
「ははは」
彦右衛門は思わず笑いだして、
「お見かけによらぬもの。殿にもそんな嫉妬がおありでございましたか」
「あるとも。わしは、女人の愛には、そう嫉かないつもりだが、良い家臣を他家へ取られたら、非常に嫉妬するだろう」
「丹羽殿がさようなことをなさるはずはありません」
「はずもないものを案じるがゆえに嫉妬ではないか」