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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
「おつかれ遊ばしたのでしょう。すこしお体でもさすりましょう」
と、肩へ手をあてがった。
無用とも、せよともいわない。しかし蘭丸は、信長がよく背が凝るというのを聞いているので、揉むところを知っていた。揉めば信長は、なすままに、体をまかせている。
「……むりもない、民心がこの信長に、頼りきらぬもむりではない」
彼はなお思いつづけている。
「いま信長の味方といえば、三河の徳川家があるばかり。それとて、近ごろは武田家との抗争で、力とは恃み難い。その徳川家をのぞいたら、この信長を、父とも思うといった将軍家義昭をはじめ、遠くは西国の毛利家にいたるまで、みなわが敵であらぬはない。――領民の眼から見たら、この城も、危うく見えよう、儚く見えるも尤もである」
どうして、そういう民心の信望をつなぐか。この人でなければと、領民が一心一体となってくるか。信長にはこうしか考えられなかった。
「まだやり足らないのだ。身をもってやり通そうと誓ってやって来た年来の実行も、まだ人眼から見れば、やり足りていなかった。――そうだ、これからも、身をもって信念を実行に示してゆく。それしか、民心を得る途もなく、また信長の生きる途もない」