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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
宿直にそれを渡すと、信長は間もなく寝所にはいった。
卯の刻といえば早暁だった。召しをうけた人々は、何事かと暗いうちに起き出て来た。ここ久しく軍議もなかった。主君の胸に、そも何事か、機も熟せりと神算が立ったのだろうかと。
出揃った朝の顔は、天井のたかい大広間に居ながれていた。柴田、佐久間の首席をはじめ、氏家卜全、安藤伊賀守、武井夕菴、明智十兵衛などの顔もあった。
信長が着座した。
軍議は、実にみじかい時間で終った。一決して、すぐ各※(二の字点、1-2-22)席を立つ。
外へ出てみれば、まだ朝の大気が水々しい。
「朝飯前に決ったな」
「左様さ。御評議のみか、駈け向うところも、この意気では、朝飯前で片づいてしまうじゃろ」
廻廊をながれて退る諸将のすがたには、もう明らかに戦気が立っていた。――その朝、信長が諸将に諮ったのは、
「まず、長嶋の門徒一揆から平らげて、四敵八塞の象にある岐阜の位置を、一角から打開してゆこうと思うが如何に」
と、いう議であった。
大坂の石山本願寺、京の叡山、尾張、伊勢境の長嶋門徒。
なお江州や各地に、僧徒の勢力は、根ぶかく散在しているが、以上三つが、反信長聯盟の三本山として、歴然たる抗争の旗をひるがえしているものだった。