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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

もう数年も前に、織田方のさぐりに行って消息も絶え果てていた乱波組の者が、ふいに夜中、しかも僧形して、門を叩いて一泊を乞うなど。……なぜよく糺してみなかったのじゃ」

「その儀は、何とも、手ぬかりでございました。――が、彼のいうには、織田家の領に入りこんで、探りを働いておるうち、甲州の諜者と露顕して、獄に投げこまれ、幾年かを牢中で送っていたところ、幸いに、よい折があって、一命をひろい、姿を変えて帰って来たと、真しやかに申すのでございました。――そして明日は、甲府に出て、組頭の甘糟三平どのをお訪ねするつもりなどとも云いますので、すっかり真にうけておりましたところ、今し方、てまえが水屋から手桶をさげて出ると、お茶屋の北窓の下に、その天蔵めが、やもりのように貼りついて、立ち聞きいたしておるではございませんか」

「なに。……ここでの、お館とのおはなしを、物蔭でぬすみ聞きしておったとか」

「はい。――跫音に、てまえの方を振り向くと、さすがに愕いた態で、すたすたと庭の奥へ歩いて行きますゆえ、これ、天蔵どの、これ待たんかと、声をかけましたが、まるで耳もない顔して、そそくさと、足を早め出しました。