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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁

青空文庫

かれの面や眼ざしはその日、わけても市民たちをニコやかに見まわしているふうだった。

「何事もないらしいが?」

市民たちは辻々にあふれ出て、信長を拝した。ほっとした安心がもりあがる歓呼となって、わあッというどよめきの波になった。

するとその歓呼の辻から、ふいに一発の鉄砲が鳴りとどろいた。弾丸は信長の身をかすめたが、信長はけろりとしたのみで、音のした方を振り向いただけだった。

当然――

まわりにいた部将たちは、馬をとび降りて、曲者を捕えにどっと駈けたが、かれらよりは、市民たちのほうが勃然と一致して、

「ばか者を捕えろ」

と、怒った。

市民は自分たちの味方だと考えていた曲者は、案に相違したので逃げ場をうしない、忽ち抑えられてしまった。山門第一の勇僧といわれていた法師で、捕まってもまだ、

「仏敵め、魔王め」

と、信長を罵っていた。

信長は、眼のなかにチリがはいったような顔もしていない。予定どおりかれは道をすすんで、やがて皇居に近づくと下馬した。

神泉で手をきよめ、しずかに御所の門前へあゆみ寄って、そこに坐った。

「一昨夜来の猛火、さだめし内裏におかれても、お愕きのことと拝しまする。