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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 頁
「敵として、不足のない敵。このたびの合戦こそは、全甲州の実力と、全徳川の実力とが、真正面にぶつかって、のるかそるかの乾坤一擲となるだろう」
ひとりでに身ぶるいの出るような張合いが、甲軍全体の士気をいやが上にも高くしていた。
こういう余裕をもって。
信玄はその本陣を江台島にうつし、一方、伊奈四郎勝頼、穴山梅雪などの一手を、二俣城へ向けて、
「手間どるな」
と、厳命した。
それに対して、家康は、
「味方には、大事な防禦の線。敵が奪れば、攻め入るに有利な一拠地。――守将、中根正照を苦戦におちいらすな」
と、すぐ援軍を送り、自身も後詰に向って、督戦していたが、変幻極まりない武田軍の陣容は、たちまち変貌して、左右に迫り、へたをすれば、うしろ巻きしている家康自身の陣地が、浜松と遮断されそうな形になった。
しかも、その間に。
城は水の手の動脈を断たれてしまった。
二俣城のもっとも痛い弱点を、敵の詭計に突かれたのだ。この城の一方が天龍川に臨んでいるので、飲料その他、城兵の生命とする水は、城壁の一端から懸出してある井楼に車をかけ、井戸水を汲むように川から上げていたものである。